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第2話 再婚話 01

last update Tanggal publikasi: 2026-02-25 06:00:08

 黒い革靴。整えられた髪。無駄のないスーツの皺。法廷で見たAIロボットみたいな冷たい姿のままなのに、今はなぜか——私の目の前にいるだけで空気が違って見えた。

「……なにか御用ですか」

 声が震えた。怖い。

 この人はさっきまで私を切り刻んでいた。今さらなにを言われるのか、想像するだけで胃が痛む。

 彼は私の顔を一度だけ見て、すぐに視線を逸らした。

「ここでは話しにくいので、お話を聞いてもいいと思われたらこちらにいらしてください。移動しましょう。あなたにとって悪い話ではないと思います」

 悪い話じゃないとはどういうことだろう?

 興味がわいたので話を聞くことにした。

「わかりました。どこに行けばいいですか?」

「これを」

 Invitation(招待状)と書かれたカードをもらった。

「おひとりでいらしてくださいね。場所はキューズロイヤルホテルの会員制のレストランになります。タクシーチケットも入っているので、そちらを利用していらしてください。招待状を見せれば中に入れます。では」

 AIロボットの彼はきびきび歩いて去っていった。

(どうせ行く宛てもないし……行ってみよう)

 彼にもらった招待状とタクシーチケットを使い、私はキューズロイヤルホテルへ向かった。

 ※

 到着したのは有名な高級ホテルで、1泊の宿泊金額が桁違いのロイヤルスウィートルームもある場所だった。その最上階の会員制のレストランを指定してくるなんて。

 フロントで恐る恐る招待状を見せると、エレベーターを案内してくれた。直通のそれに乗って店に入る。

「いらっしゃいませ」

 招待状を見せると中に通してくれた。完全プライベート個室のようで、案内された席は6名ほどがゆったり座れる個室で、すでに先ほどの彼が座っていた。

「ゆっくり食事をしながら話をしましょう。コース料理が出てくるので、食べながら」

 先ほどの固い表情とは違い、ややプライベート感のある顔を見せられた。

「お話の前に質問があります」

「はい……なんでしょうか?」

「小倉さん……あなたは、潮(うしお)小・中学を卒業した三浦美都さんで間違いないすか?」

「はい、そうですが、なぜそれを?」

 どうして知っているのだろう。不審そうな顔をしていたら、彼が一気にくしゃっと顔を崩した。「俺、島崎だよ。島崎理人! 親が再婚して名前が変わったんだ」

「あ!」

 私の中で彼の昔の顔が蘇った。確か分厚い眼鏡をかけ、クラスに馴染めずに孤立していた男の子――確かに島崎くんだ。

 でも、彼はもっとぶつぶつが多くて太っていて、ぜんぜん面影ないよ……。

「ごめん、島崎くんって全然わからなかったわ」

「親父になってくれた人にしごかれて、体型変わったんだよ」

「変わったどころの騒ぎじゃないでしょ。あ、でも、かっこよくなったんだね」

「三浦さんにそう言ってもらえてうれしいよ。あ、これ」

 彼は名刺を差し出した。

 財前 理人(ざいぜん りひと)

 弁護士。

 名刺の紙は厚く、角がきっちりしていて、指先にかすかな凹凸が伝わる。

「島崎君……ええと、今は財前君か。私になんの話があるの?」

「――まずは、ごめん」

 財前君は目の前のテーブルに頭を擦る勢いで頭を垂れた。

 えっ、なんで、財前君が謝っているの!?

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